妹「くちゃくちゃくちゃくちゃ」
兄「……」
妹「今日これから雨降るんだって 」
妹「早めに帰ったほうがいいんじゃないの?」クチャクチャ
兄「……その、さ」
妹「なに?」クチャクチャ
兄「……飯食うときはきちんと口を閉じて食べろよ」
兄「お前、よく舌噛むしさ」
妹「……わかったから早く帰ってよ」クチャクチャ
兄「……そうだな。濡れるのイヤだし早めに帰るわ。 夜の病院ってこわいし」
兄「また明日、大学の帰りにこっち寄るわ」
妹「はいはい」クチャクチャ
兄「じゃあまた明日」
妹「はいはい、おやすみ」
◇
母「アンタもたまには早く帰ってきたら?」
母「毎回、面会時間ギリギリまで病院にいられるとむかいにいくのも億劫だからさ」
兄「あー、そうだね」
母「それで? あの子の様子はどう?」
兄「特に変わった様子もなんにもない。薬もきちんと飲んでるみたいだし」
母「……そう」
母「はあ……いつになったらもとに戻るのかな」
兄「知らん。それにまだ三ヶ月もたってないしな。気長に待つしかないよ」
母「わかってる。そんなことはわかってるの」
母「たださ、いいかげんにあの子の顔が見たいから……」
兄「いずれはもとに戻って母さんにも顔見せるだろ、たぶん」
母「まあたしかに。今の様子だとわたしとは会ってくれないよね……」
兄「……会いに行けば?」
母「こわいから遠慮する」
兄「冗談抜きで会わない? 」
兄「最近はアイツも落ち着いてきたし、もしかしたら……」
母「そりゃあわたしもあの子には会いたいよ」
母「でもわたしの顔見たらあの子の症状がまた悪化するかもしれないからさ」
兄「そっか」
母「まあ、あの子の病が完治したらまた会うよ」
兄「……」
母「明日は朝、早いんでしょ? アンタも早く寝なよ」
兄「うん……おやすみ」
母「おやすみ」
心に沁みました。