312: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/03/15(日) 20:33:59.97 ID:LdkX2v0do
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瓶の底で、それは光っている。机の引き出しにしまわれた小瓶をときどき取り出して、彼女はそれを眺めてみる。
きらきらとした輝きを自ずから放つ不思議な粒に、彼女は魅了されていた。
それは彼女だけの秘密の小瓶。誰にも見せることのない輝き。
引き出しの奥に秘めた輝きを彼女は大事そうに守っている。
誰かが小瓶を見つける。きらきらと輝いていたそれは、亜鉛の粉末のように鈍く光を反射するだけだ。
誰かは瓶を指先でつかみあげると、フローリングの床に向けて投げつける。
誰かは部屋をあとにする。
彼女は床の上で粉々になった瓶を見つける。きらきらと輝く粒は今となっては灰褐色の砂でしかない。
開け放たれた窓から風が吹き込む。
砂埃のように粉は舞い、部屋をすり抜けていく。
残ったのは小瓶のガラス片だけだ。
彼女はそこにかがみこみ、さめざめと泣いている。