[4/4]幼馴染「いっしょにいようよ」
※[3/4]幼馴染「いっしょにいようよ」のつづきです
310: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/03/15(日) 20:31:59.40 ID:LdkX2v0do
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朝の街に俺は仮面をつけて出掛ける。首筋に糸を巻く。喉が過ちを犯しそうになると、指先が糸を引いて喉を目覚めさせる。
過ぎた光は暗闇に近付いていく。光は視界を焼きつくし何も見えなくする。
何もかもがあらわな場所は何もかもが覆われた場所とよく似ている。
強い光の中、砂糖菓子の匂いが鼻から入り込んでくる。
その甘みは俺の体を柔らかに痺れさせ、思考を押しとどめ、声をあげさせる。
視界は光に満ちる。けれどそれは長く続かない。
立ち並ぶビルは裏山の小枝。太陽は画用紙に刺された画鋲の痕。人々は指人形のように呼吸を感じさせない。
そう感じるのは俺の責任なんだと俺は知っている。ビルはビル、太陽は太陽、人は人だと、そう感じられないのは俺のせいだ。
頭上を雲が暗く覆う。
俺は人混みのなかで立ち止まる。十字路の中心で途方に暮れる。誰もがどこかに向かっていくのに、俺は立ちすくんでいる。
誰も俺に声を掛けたりしないし、俺の手を引いてどこかに連れて行ってくれたりはしない。俺にどこかに行けと強要するものさえいない。
砂糖菓子の匂いは消える。